
人生100年時代を迎えた今、「健康寿命」を延ばすことが誰にとっても重要なテーマとなっています。その鍵を握るのが、実は「お口の健康」なんです。最近、歯科業界や介護予防の分野で注目されている「オーラルフレイル」という言葉を耳にしたことはありますか?
この記事では、オーラルフレイルについて専門用語を極力使わず、誰にでもわかりやすく解説していきます。自分自身やご家族のお口の健康を守るために、今日から実践できる予防法も詳しくご紹介します。
まずは知っておきたい「フレイル」の基本

オーラルフレイルを理解する前に、まず「フレイル」という概念を押さえておきましょう。
フレイルとは、「健康」と「要介護」の中間段階にある状態のことです。加齢に伴って心身の活力(筋力、認知機能、社会とのつながりなど)が低下した状態を指します。英語の「Frailty(虚弱、脆弱)」が語源となっており、厚生労働省も重要な健康課題として位置づけています。
フレイルの特徴は、適切に対応すれば改善が可能な状態であるという点です。つまり、早期に気づいて対策を講じることで、健康な状態に戻ることができるのです。逆に放置してしまうと、要介護状態へと進行してしまうリスクが高まります。
興味深いことに、フレイルは身体機能の低下よりも先に、社会参加の減少や口腔機能の衰え(オーラルフレイル)から始まることが研究で明らかになっています。つまり、お口の健康を守ることが、全身の健康を維持する第一歩なのです。
オーラルフレイルとは?専門用語をやさしく解説

オーラルフレイルの定義
オーラルフレイルとは、噛む、飲み込む、話すなどの口腔機能が衰えることを指します。「オーラル(oral)」は「口の」、「フレイル(frail)」は「虚弱」という意味です。
厚生労働省によると、オーラルフレイルは「老化に伴う様々な口腔の状態(歯数・口腔衛生・口腔機能など)の変化に、口腔の健康への関心の低下や心身の予備能力低下も重なり、口腔の脆弱性が増加し、食べる機能障害へ陥り、さらにはフレイルに影響を与え、心身の機能低下にまでつながる一連の現象および過程のこと」と定義されています。
少し難しい表現ですが、簡単に言えば「お口の些細な衰えが、全身の健康低下につながる負の連鎖」のことです。
新しい概念として注目される理由
日本歯科医師会は、人生100年時代に向けて、従来の「8020運動(80歳で20本の歯を残そう)」に新たに「オーラルフレイル対策」を加えて展開しています。歯の本数を保つだけでなく、口の機能を維持することの重要性が認識されるようになったのです。
2024年4月には、日本老年医学会、日本老年歯科医学会、日本サルコペニア・フレイル学会の3学会が合同でオーラルフレイルに関するステートメントを発表し、その概念を「口の機能の健常な状態(いわゆる『健口』)と『口の機能低下』との間にある状態」と明確に位置づけました。
フレイルとオーラルフレイルの違い

フレイルとオーラルフレイルは密接に関連していますが、明確な違いがあります。
フレイルは全身的な虚弱状態を指し、以下の3つの種類に分類されます:
- 身体的(フィジカル)フレイル:筋力低下、歩行速度の低下など
- 精神・心理的(メンタル)フレイル:認知機能の低下、うつ状態など
- 社会的(ソーシャル)フレイル:社会とのつながりの減少、孤立など
一方、オーラルフレイルは口腔機能に特化した概念で、これらのフレイル全体の「入り口」となる重要な状態です。研究によると、筋力低下などの身体的フレイルよりも先に、社会参加の減少やオーラルフレイルから始まることが分かっています。
つまり、オーラルフレイルを予防・改善することで、全身のフレイル進行を食い止めることができるのです。
オーラルフレイルの初期症状に気づくチェックリスト

オーラルフレイルは早期発見が非常に重要です。以下のチェックリストで、ご自身やご家族の口腔状態を確認してみましょう。
【オーラルフレイル・セルフチェック】
日本老年歯科医学会が推奨する5項目のチェックリストです。2項目以上に該当する場合は、オーラルフレイルの可能性があります。
- 残存歯数が20本未満である(さし歯や金属をかぶせた歯は含む)
- 半年前と比べて、硬いものが食べにくくなった(咀嚼困難感)
- お茶や汁物でむせることがある(嚥下困難感)
- 口の中が乾燥する(口腔乾燥感)
- 滑舌が悪くなった(舌口唇運動機能の低下)
これら5項目のうち2つ以上に該当する場合、オーラルフレイルの状態にある可能性が高いと判定されます。該当した方は、早めに歯科医院を受診することをおすすめします。
参考:日本老年歯科医学会|オーラルフレイルを知っていますか?
こんな症状は要注意!噛む・飲み込む力の低下サイン
日常生活の中で、以下のような変化に気づいたら要注意です:
噛む力の低下サイン
- 固い食べ物(たくあん、するめ、せんべいなど)が噛めなくなった
- 食事に時間がかかるようになった
- 柔らかいものばかり選んで食べるようになった
- 食べこぼしが増えた
- 食欲が低下した
飲み込む力の低下サイン
- お茶や汁物でむせることが増えた
- 飲み込みにくさを感じる
- 食事中に喉に食べ物が詰まる感じがする
- 薬が飲み込みにくくなった
その他のサイン
- 滑舌が悪くなり、はっきり発音できない
- 口の中が乾燥しやすくなった
- 口臭が気になるようになった
- 歯が抜けたまま放置している
- 人との会話や外食の機会が減った
これらは「年のせい」と軽視されがちですが、実はオーラルフレイルの重要なサインです。放置せず、早めの対策が肝心です。
オーラルフレイルの原因とリスク要因

オーラルフレイルは一つの原因ではなく、複数の要因が複合的に関与して発生します。主な原因とリスク要因を見ていきましょう。
1. 加齢による自然な機能低下
年齢を重ねると、筋肉量や筋力が自然に低下します。これは口周りの筋肉(舌、頬、唇など)も同様です。特に舌の筋力低下は、食べ物を口の中で移動させたり、飲み込んだりする機能に大きく影響します。
2. 歯の喪失
虫歯や歯周病によって歯を失うと、噛む力が低下します。1本でも歯が抜けると、噛むバランスが崩れ、他の歯にも負担がかかります。特に奥歯を失うと、噛む力は大幅に低下し、食べられるものが制限されます。
3. 口腔ケアの不足
歯磨きや舌のケアが不十分だと、口腔内の細菌が増殖し、歯周病や口臭の原因となります。また、口腔衛生状態の悪化は、全身の健康にも悪影響を及ぼします。
4. 病気や薬の影響
糖尿病、脳卒中、パーキンソン病などの全身疾患は口腔機能に影響します。また、多くの薬(降圧剤、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬など)の副作用で唾液分泌が減少し、口腔乾燥を引き起こします。
5. 栄養状態の悪化
噛む力が低下すると、柔らかいものばかり食べるようになり、栄養バランスが偏ります。特にタンパク質不足は筋肉量の減少を招き、さらなる口腔機能低下につながる悪循環に陥ります。
6. 社会的孤立と運動不足
一人暮らしや家に閉じこもりがちな生活は、会話の機会が減り、口を動かす頻度が低下します。また、全身の運動不足も筋力低下を加速させます。
7. その他のリスク要因
- 睡眠不足やストレス
- 口呼吸の習慣(鼻呼吸ができない)
- 生活習慣病(高血圧、肥満など)
- 認知機能の低下
これらの要因は相互に影響し合い、オーラルフレイルを進行させます。だからこそ、多角的なアプローチでの予防が重要なのです。
参考:東京都健康長寿医療センター|高齢期における口腔機能の重要性
オーラルフレイルが引き起こす影響:栄養不足や要介護リスクに注目

オーラルフレイルを放置すると、どのような影響があるのでしょうか。最新の研究データを基に解説します。
負の連鎖:オーラルフレイルから要介護へ
オーラルフレイルは、以下のような負の連鎖(負のスパイラル)を引き起こします:
【負の連鎖のプロセス】
- 口腔機能の低下(噛めない、飲み込めない、むせる)
- 食欲低下・食事量の減少
- 栄養不足(特にタンパク質・ビタミン不足)
- 筋肉量の減少・筋力低下(サルコペニア)
- 基礎代謝の低下・エネルギー不足
- 活動量の減少・疲れやすさ
- さらなる食欲低下
- 身体的フレイル・要介護状態へ
この連鎖を断ち切るには、早期の段階でオーラルフレイルに気づき、対策を講じることが極めて重要です。
驚くべき研究データ
東京大学と東京都健康長寿医療センターが地域の高齢者約2,000人を対象に実施した追跡調査では、衝撃的な結果が報告されています:
オーラルフレイルがある人は、ない人と比べて:
- 要介護リスクが約2.4倍
- 死亡リスクが約2.1倍
- 身体的フレイル発症リスクが約2.4倍
さらに、オーラルフレイルと身体的フレイルを併発した場合、要介護認定のリスクが2.8倍に跳ね上がることも明らかになっています。
また、千葉県柏市で実施された研究でも、オーラルフレイルの状態にある高齢者は、4年後の要介護リスクが約1.7倍、死亡リスクが約1.9倍になったと報告されています。
これらのデータは、口の些細な衰えが、いかに全身の健康に深刻な影響を及ぼすかを示しています。
栄養不足が招く悪循環
オーラルフレイルによって噛む力や飲み込む力が衰えると、固いものや繊維質の多い食品を避けるようになります。その結果:
- タンパク質不足:肉、魚、大豆製品の摂取が減り、筋肉が減少
- ビタミン・ミネラル不足:野菜、果物の摂取が減り、免疫力が低下
- 食物繊維不足:便秘や腸内環境の悪化
- 食事の楽しみの喪失:食欲低下、うつ傾向へ
栄養不足は免疫機能の低下を招き、感染症(特に誤嚥性肺炎)のリスクも高まります。
全身の健康と深く関わるお口の役割

お口の健康は、単に「食べる」ためだけのものではありません。全身の健康と密接に関わっている理由を見ていきましょう。
1. 栄養摂取の入り口
お口は、生命維持に必要な栄養を取り入れる最初の関門です。よく噛むことで食べ物が細かくなり、消化吸収が促進されます。噛む力が低下すると、栄養の吸収効率も低下してしまいます。
2. 脳への刺激
噛む動作は、脳への血流を増加させ、脳を活性化します。研究によると、よく噛む人は認知症のリスクが低いことが分かっています。咀嚼は脳の健康維持にも重要な役割を果たしているのです。
3. 唾液の分泌
よく噛むことで唾液の分泌が促進されます。唾液には以下の重要な働きがあります:
- 消化を助ける(アミラーゼという消化酵素が含まれる)
- 口腔内を清潔に保つ(自浄作用)
- 虫歯や歯周病を予防する(抗菌作用)
- 食べ物を飲み込みやすくする(潤滑作用)
- 味を感じやすくする
4. コミュニケーション機能
はっきりとした発音や表情の豊かさは、円滑なコミュニケーションに欠かせません。滑舌が悪くなったり、口元の見た目が気になったりすると、人との会話を避けるようになり、社会的孤立につながる可能性があります。
5. 誤嚥性肺炎の予防
飲み込む力(嚥下機能)が低下すると、食べ物や唾液が誤って気管に入り、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まります。誤嚥性肺炎は高齢者の死亡原因の上位を占める重大な疾患です。
このように、お口の健康は「食べる」「話す」「笑う」という人間らしい生活を支える基盤であり、QOL(生活の質)の維持に直結しているのです。
参考:済生会|飲み込みづらい?それって「オーラルフレイル」かも
オーラルフレイル予防に効果的な口腔体操

オーラルフレイルは予防・改善が可能です。ここでは、日本歯科医師会が推奨する口腔体操を詳しくご紹介します。毎日続けることで、口の周りの筋肉に刺激を与え、機能維持・向上が期待できます。
1. お口・舌の動きをスムーズにする体操
【パタカラ体操】
最も有名で効果的な体操です。「パ」「タ」「カ」「ラ」の4つの音を、大きくはっきりと発音します。
- 「パ」:唇をはじくように発音(唇の筋肉を鍛える)
- 「タ」:舌先を上の前歯の裏につけるように発音(舌の前側を鍛える)
- 「カ」:舌の奥を上顎の奥につけるように発音(舌の奥側と飲み込む力を鍛える)
- 「ラ」:舌をまるめるように発音(舌全体の動きをなめらかにする)
実践方法:各発音を8回ずつ、2セット行います。「パパパパパパパパ、タタタタタタタタ、カカカカカカカカ、ラララララララララ」と、リズミカルに発音しましょう。
【口の体操】
- 口をすぼめて「ウ」の形を作る
- 次に「イー」と横に大きく開く
- これを10回繰り返す
【ほほの体操】
- ほほを膨らませる(風船のように)
- 次にすぼめる
- 数回繰り返す(水を口に含んでもOK)
2. 飲み込むパワー(嚥下機能)をつける体操
【ベロ出しごっくん体操】
舌を少し出したまま、口を閉じてつばを飲み込みます。この動作により、飲み込みに必要な筋肉が鍛えられます。
【おでこ体操】
- 手のひらでおでこを押さえる
- おへそをのぞき込むように下を向く
- 手とおでこで押し合いながら5秒キープ
- 3〜5回繰り返す
【ごっくん体操】
- 喉ぼとけに手を当てる
- 顎を少し引く
- ゴクッと飲み込んで、喉ぼとけを上げる
- 上げたまま5秒保つ
- 息をしっかり吐き出す
3. 噛むパワー(咀嚼機能)をつける体操
【ガムを使った咀嚼訓練】
ガムを噛むことで、噛むために必要な筋肉を効率的に鍛えることができます。
実践方法:
- 1日2回(朝と夜)、計5分間ガムを噛む
- 最初の2分間はリズムを決めて、残りの3分間は自由に噛む
- 唇を閉じてしっかりと噛む
- 左右両側で均等に噛む(片噛みに注意)
- 姿勢を正して噛む
4. 滑舌をよくする体操
【早口言葉】
口の動きをよくし、明瞭な発音につながります。表情も豊かになります。
- レベル1:「なまむぎ なまごめ なまたまご」
- レベル2:「隣の客はよく柿食う客だ」
- レベル3:「あおまきがみ あかまきがみ きまきがみ」
- レベル4:「隣の竹垣に竹立てかけたのは 竹立てかけたかったので 竹立てかけた」
口を大きく動かしながら、3回続けて言いましょう。
5. 舌のパワーをつける体操
【舌トレーニング】
- 舌で下顎の先を触るつもりで思い切り伸ばす
- 舌で鼻のあたまを触るつもりで上へ伸ばす
- 舌を左右に伸ばす
- 舌で口の周りをぐるりと一周する(右回り、左回り)
- スプーンなどを舌に当てて押し、その力に抵抗するように舌を上げる
6. 唾液腺マッサージ
唾液の分泌を促進するマッサージです。
【耳下腺マッサージ】
指数本を耳の前(上の奥歯あたり)に当て、10回ほど円を描くようにマッサージします。
【顎下腺マッサージ】
顎のラインの内側のくぼみ部分3〜4か所を順に押していきます。各ポイントを5回ほど。
【舌下腺マッサージ】
顎の中心あたりの柔らかい部分に両手の親指を揃えて当て、10回ほど上方向にゆっくり押し当てます。
これらの体操は、テレビを見ながら、お風呂に入りながらなど、日常生活の中で気軽に取り入れることができます。継続することが何より大切です。
日本歯科医師会推奨のトレーニング方法

日本歯科医師会は、オーラルフレイル予防のため、包括的なトレーニングプログラムを推奨しています。前述の口腔体操に加えて、以下のポイントも重要です。
食事のポイント
噛む力を維持・向上させるための食事の工夫:
- ひと口で30回以上噛む:よく噛むことで唾液分泌が促進され、消化もよくなります
- 口いっぱいに物を詰め込まない:ゆっくり味わって食べましょう
- ひと口ごとに箸を置く:急いで食べる習慣を改善します
- 食材はやや大きめに切る、やや硬めにゆでる:噛む回数が自然に増えます
- 歯ごたえのある食材を使う:根菜類、きのこ類、こんにゃくなど
- ながら食べをしない:テレビやスマホを見ながらの食事は避け、食事に集中しましょう
セルフケアの重要性
毎日のセルフケアも欠かせません:
- 正しい歯磨き:1日2回以上、食後と就寝前に丁寧に磨く
- 舌のケア:舌ブラシで舌の汚れ(舌苔)を優しく除去
- デンタルフロスや歯間ブラシの使用:歯と歯の間もしっかりケア
- 入れ歯のケア:毎食後に外して洗い、専用洗浄剤で清潔に保つ
- 口腔保湿:口の乾燥が気になる場合は、保湿ジェルなどを活用
生活習慣の見直し
- バランスの良い食事:タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取
- 適度な運動:ウォーキングなど全身の筋力維持も大切
- 社会参加:地域活動や趣味のサークルなど、人と話す機会を持つ
- 禁煙:喫煙は歯周病のリスクを高めます
- 十分な睡眠:質の良い睡眠は全身の健康維持に不可欠
日本歯科医師会の公式YouTubeチャンネルでは、「日歯8020テレビ」シリーズとして、口腔体操の実践動画が公開されています。視覚的に学ぶことで、より効果的なトレーニングが可能です。
参考:日本歯科医師会|セルフケアのオススメ カンタン!楽しい!お口のトレーニング
歯科医院で行う専門的ケアと定期健診の重要性

セルフケアだけでは限界があります。歯科医院での専門的なケアと定期健診が、オーラルフレイル予防には欠かせません。
歯科医院で受けられる専門的ケア
1. 口腔機能検査
歯科医院では、以下のような客観的な検査で口腔機能を評価できます:
- 咬合力測定:噛む力の測定
- 舌圧測定:舌の力の測定
- 咀嚼能力検査:食べ物を噛み砕く能力の評価
- 嚥下機能検査:飲み込む力の評価
- 口腔乾燥度測定:唾液分泌量の測定
- 舌口唇運動機能検査:滑舌や舌の動きの評価
これらの検査により、自覚症状がない段階でも口腔機能の低下を早期発見できます。
2. プロフェッショナルケア
- 歯石除去(スケーリング):自分では取れない歯石を除去
- PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング):専門的な歯のクリーニング
- フッ素塗布:虫歯予防
- 口腔機能訓練の指導:一人ひとりに合った効果的なトレーニング方法の指導
3. 治療とリハビリ
- 虫歯・歯周病の治療:早期発見・早期治療
- 義歯(入れ歯)の作製・調整:合わない入れ歯は口腔機能を低下させます
- 口腔機能低下症の治療:保険適用での専門的治療
定期健診の推奨頻度
- 3〜6ヶ月に1回の定期健診が理想的です
- 口腔機能に不安がある方は、より短い間隔での受診をおすすめします
- かかりつけ歯科医を持つことで、継続的な管理が可能になります
定期健診のメリット
- 早期発見・早期治療:自覚症状が出る前に問題を発見
- 予防効果:虫歯や歯周病の予防につながる
- 医療費の削減:早期治療は費用も時間も少なくて済む
- 全身の健康管理:口腔内の変化から全身疾患の兆候を発見できることも
- 安心感:専門家のチェックによる安心感
歯科医院は「痛くなってから行く場所」ではなく、「健康を維持するために定期的に通う場所」という意識の転換が大切です。
参考:日本歯科医師会|歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル2019年版
小児の「食べる・話す」を診療に取り入れたい先生へ

本記事では高齢者のオーラルフレイルを中心にご紹介しましたが、
「口腔機能の低下を早期にとらえ、悪化させない」という考え方は、小児期から同じように重要です。
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口腔機能低下症との関係:早期発見と対策のポイント

オーラルフレイルと密接に関連する「口腔機能低下症」について理解しておきましょう。
口腔機能低下症とは
口腔機能低下症は、2018年に保険病名として認められた「疾患」です。オーラルフレイルが状態を表す概念であるのに対し、口腔機能低下症は診断基準に基づいた医療保険上の病名という点が決定的な違いです。
簡単に言えば、オーラルフレイルがさらに進行して「疾患」とみなされる状態が口腔機能低下症です。
口腔機能低下症の診断基準
以下の7つの評価項目のうち、3項目以上に該当すると口腔機能低下症と診断されます:
- 口腔衛生状態不良(口腔不潔):舌の汚れが多い状態
- 口腔乾燥:唾液分泌量の低下
- 咬合力低下:噛む力の低下
- 舌口唇運動機能低下:舌や唇の動きの低下
- 低舌圧:舌の力の低下
- 咀嚼機能低下:食べ物を噛み砕く能力の低下
- 嚥下機能低下:飲み込む力の低下
これらは歯科医院で専門的な検査により評価されます。
段階的な進行
口腔の健康状態は、以下のように段階的に変化します:
【健康な口(健口)】
↓
【オーラルフレイル】(口腔機能の軽微な衰え・可逆的な状態)
↓
【口腔機能低下症】(疾患としての診断・専門的治療が必要)
↓
【摂食嚥下障害】(食べる機能の重度の障害)
つまり、オーラルフレイルの段階で気づいて対策を講じることが、口腔機能低下症への進行を防ぐ鍵となります。
早期発見のポイント
- セルフチェックの習慣化:定期的に自己チェックを行う
- 小さな変化を見逃さない:「年のせい」と片付けない
- 家族や周囲の人の観察:本人が気づかない変化に気づくことも
- 定期的な歯科受診:専門家による客観的評価
早期対策の重要性
オーラルフレイルは改善可能な状態です。しかし、口腔機能低下症まで進行すると、改善には専門的な治療とより多くの時間が必要になります。さらに進行して摂食嚥下障害に至ると、健康な状態への回復は非常に困難になります。
だからこそ、オーラルフレイルの段階での早期発見と対策が極めて重要なのです。
参考:健康長寿ネット|オーラルフレイル・口腔機能低下症の診断
※なお、小児期からの口腔機能の発達不全に対して適切に介入することは、将来のオーラルフレイル予防という観点からも重要です。
Qwelでは、小児口腔機能発達不全症の導入を検討されている歯科医院様向けのサポートパックをご用意しています。
まとめ:オーラルフレイルを理解し、日々のケアで健康寿命を延ばそう

ここまで、オーラルフレイルについて詳しく解説してきました。最後に重要なポイントをまとめます。
オーラルフレイルの重要ポイント
- オーラルフレイルは全身の健康に直結する
口の些細な衰えが、栄養不足、筋力低下、要介護リスクの増大につながります。 - 早期発見・早期対策が可能
セルフチェックと定期的な歯科受診により、早期発見が可能です。そして、適切な対策により改善できる状態です。 - 日々の積み重ねが大切
口腔体操、バランスの良い食事、丁寧なセルフケア、社会参加など、日常生活での取り組みが予防につながります。 - 専門家のサポートを活用する
歯科医院での定期健診と専門的ケアは、健康寿命延伸の強力なパートナーです。
今日から始められること
- セルフチェックリストで現状確認:2項目以上該当したら要注意
- 毎日の口腔体操:パタカラ体操など、できることから始めましょう
- 食事の見直し:よく噛んで、バランス良く食べる
- 歯科医院の予約:半年以上受診していない方は、ぜひ予約を
未来志向で考えよう
人生100年時代、健康寿命を延ばすことは誰にとっても重要な課題です。オーラルフレイル対策は、決して特別なことではありません。毎日のちょっとした意識と行動の積み重ねが、10年後、20年後のあなたの健康を大きく左右します。
「まだ大丈夫」と思っているうちに、少しずつ始めてみませんか?お口の健康は、あなたの未来の「食べる楽しみ」「話す喜び」「笑顔」を守る土台です。
今日から、未来の自分への投資として、オーラルフレイル予防を始めましょう!
参考文献・引用元URL
公的機関・学会
- 日本歯科医師会|オーラルフレイル
- 日本歯科医師会|オーラルフレイル対策のための口腔体操
- 厚生労働省|年代別にやるべき予防とお口のケア
- 厚生労働省 e-ヘルスネット|口腔機能の健康への影響
- 日本老年歯科医学会|オーラルフレイルを知っていますか?
- 日本老年医学会|オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント
研究機関
その他